大阪地方裁判所 昭和40年(ワ)2628号 判決 1969年4月09日
主文
被告椿本興業株式会社は原告に対し金七〇六万五三〇円及びこれに対する昭和四〇年六月二四日から完済まで年六分の割合による金員を支払え。
参加人の原告並びに被告椿本興業株式会社に対する請求はいずれも棄却する。
訴訟費用はこれを三分し、その一を被告椿本興業株式会社の負担とし、その二を参加人の各負担とする。
この判決の主文第一項は原告において金一〇〇万円を担保に供するときは仮りに執行することができる。
事実
第一、当事者の申立
一、原告の申立
主文第一、同旨及び参加人の原告に対する請求を棄却する。訴訟費用は被告、参加人の負担とする、との判決並びに主文第一項につき担保を条件とする仮執行の宣言。
二、被告の申立
原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とする、との判決。
三、参加人の申立
(主たる請求)
被告に対する原告の金七〇六万五三〇円の債権は存在しないことを確認する。被告は参加人に対し金七〇六万五三〇円及びこれに対する昭和四〇年四月一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は原被告の負担とする、との判決並びに金銭の支払を求める部分につき担保を条件とする仮執行の宣言。
(予備的請求)
訴外興和機械株式会社が原告に対してなした被告に対する金七三〇万円の売掛金債権の譲渡契約はこれを取消す。被告は参加人に対し金七〇六万五三〇円及びこれに対する昭和四〇年四月一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は原被告の負担とする。との判決並びに金銭の支払を求める部分につき仮執行の宣言。
第二、当事者の主張
一、原告
(請求の原因)
(一)、訴外興亜機械株式会社(以下、訴外会社という。)は被告椿本興業株式会社(以下被告椿本興業という)に対し昭和四〇年二月一日現在で金七〇六万五三〇円の売掛金債権を有している。
被告椿本興業は訴外会社に対し横浜市役所塵芥焼却場向門型バケツトクレーン一基、天井走行バケツトクレーン二基及びこれに使用する電気用品並びに電気用品の取付工事を発注した。原告は重電機器販売業であるところから昭和三八年八月末頃訴外会社から、訴外池原重光を経て、右受注工事のうち総額一、一三〇万円相当の電気用品の納入並びに電気用品取付工事の外注を受け、昭和四〇年二月一〇日までの間に右電気用品の納入並びに取付の工事を完了した。従つて訴外会社は被告椿本興業に対し右契約上の一、一三〇万円の債権を有するにいたり、原告は訴外会社に対し同額の債権を有するにいたつたものである。そして右代金は昭和三九年一二月二七日金三〇〇万円、昭和四〇年一月末に金一〇〇万円が支払われたので、訴外会社の被告椿本興業に対する売掛金債権は金七三〇万円となつたが、その後二三万九四七〇円相当の電気用品の未納分が発見されたので、訴外会社の被告椿本興業に対する右債権は結局七〇六万五三〇円となつたものである。
(二)、訴外会社は昭和四〇年二月一九日訴外会社の原告に対する右電気用品の納入並びに取付工事に関する金七三〇万円の債務の弁済に充てるため、被告椿本興業に対する右電気用品並びに取付工事に関する右七三〇万円の残債権を原告に譲渡し、翌二〇日付の内容証明郵便で被告椿本興業に対して該債権譲渡の通知をなし、右内容証明郵便は翌二一日、被告椿本興業に到達した。
よつて原告は被告椿本興業に対して金七〇六万五三〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から完済まで年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(参加人の請求の原因事実に対する答弁)
右請求の原因事実のうち、原告と訴外会社間の債権譲渡契約が詐害行為であるとの主張は争う。その余の請求の原因事実は不知。
二、被告椿本興業
(原告並びに参加人の請求の原因事実についての答弁)
(一)、被告椿本興業が訴外会社との間で原告主張の取引をし、結局昭和四〇年二月二一日現在で原告主張の金七〇六万五三〇円の債務を負つていることは認める。
(二)、原告主張の債権譲渡通知並びに参加人主張の債権差押転付命令が被告椿本興業に到達ないし送達されたことは認める。
(三)、その余の原告並びに参加人の請求原因事実はいずれも不知であり、また、遅延損害金請求の起算点はこれを争う。
(被告椿本興業の抗弁)
被告椿本興業は訴外会社から昭和四〇年二月二一日債権譲渡通知を受けたものであるが、同月二五日同社から今度は原告に債権譲渡をした事実はない旨の通知をしてきた。そして昭和四〇年三月三一日には参加人主張の債権差押転付命令の送達を受けた。以上の次第で被告椿本興業としては、訴外会社、原告、又は参加人のいずれに債務の弁済をしてよいものか知り得ないので右債務の遅滞につき帰責事由はない。仮に、右主張が理由がないとしても、被告椿本興業の訴外会社に対する本件債務の履行期は昭和四〇年八月末日である。
三、参加人
(原告の主張事実についての答弁)
(一)、訴外会社が被告椿本興業に対し金七〇六万五三〇円の売掛金請求を有していたことは認める。
(二)、原告が訴外会社から右金七〇六万五三〇円の債権を譲り受けたことは否認する。仮りに債権譲渡契約があつたとしても、右契約は訴外会社代表者森治良吉の関知しないもので無効であり、債権譲渡通知も同様に無効である。
(三)、その余の原告主張は不知。
(参加人の請求の原因)
(一)、参加人は訴外会社に対し、訴外会社との間の大阪法務局所属公証人伏見正保作成に係る昭和四〇年二月二四日付更第二三六二八号準消費貸借契約公正証書に基き金七三一万六、一〇五円の債権を有する。
(二)、参加人は訴外会社に対する右公正証書の正本に基き、大阪地方裁判所昭和四〇年(ル)第七一三号昭和四〇年(ヲ)第七六五号債権差押転付命令により、訴外会社の被告椿本興業に対する原告主張の七〇六万五三〇円の債権を差押え転付を受けたものであり、右差押転付命令は昭和四〇年三月三一日第三債務者である被告椿本興業に送達された。
よつて右債権の債権者は参加人であるから、原告に対しては、原告が自らが債権者であると主張している債権の存在しないことの確認を求め、被告椿本興業に対しては右転付金並びに転付命令が被告椿本興業に送達された日の翌日である昭和四〇年四月一日から完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(三)、仮りに訴外会社の原告に対する右債権譲渡契約が有効だとしても、訴外会社は昭和四〇年二月一五日、既に手形不渡りを出し、債務超過の実情にあつたものであり、その後において昭和四〇年二月一九日の右債権譲渡契約は、悪意をもつてなされた詐害行為である。
よつて、参加人は原告に対しては、右債権譲渡契約を取消すことを、被告椿本興業に対しては金七〇六万五三〇円及び転付命令送達の翌日である昭和四〇年四月一日から完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
第三、証拠(省略)